花魁のモテ技術
手練手管(てれんてくだ)に見る、粋な恋の駆け引き
手練手管(てれんてくだ)に見る、粋な恋の駆け引き
花魁のモテ技術
「手練手管(てれんてくだ)」 という言葉をご存知でしょうか。
辞書では「巧みに人を操り、あの手この手で相手を引きつける方法」と説明されます。
この言葉はもともと、遊女や花魁が客の心を惹きつけるために用いた恋の技術 を指す言葉でした。
嘘をつく、嫉妬させる、甘えたり突き放したり――
現代でいうところの「モテテクニック」に近いものですが、そこには 粋・知性・計算 が込められていました。
今回は、遊女たちが実際に用いていたとされる代表的な「手練手管」 をご紹介します。
■其の一|口説(くぜつ)
「口説」とは、いわば 恋の駆け引きを含んだ痴話げんか のようなもの。
なかなか通ってくれない客に対して、
「どうして来てくれなかったの?」
「他の女と遊んでいたのでしょう?」
と拗ねてみせたり、時には泣き、時には甘く寄り添う――。
喜怒哀楽を巧みに使い分けることで、男性の心を揺さぶり、最終的には 心ごと虜にしてしまう のが、遊女の「口説」でした。
相手の表情や言葉の端々から心を読む力。
遊女たちは、人の機微に非常に敏感だったのかもしれません。
■其の二|手紙
遊郭には、武人、豪商、文化人など、位の高い上客も多く訪れました。
彼らを惹きつけるため、遊女たちは多くの教養を身につけていました。
書道、和歌、俳句、琴、三味線、囲碁、将棋――
中でも特に重視されたのが 読み書き です。
なぜなら、手紙は遊女にとって最も重要な営業手段 だったからです。
想いを綴った和歌、時には漢詩を添えた手紙。
その文字は非常に美しく、「子どもは遊女の字を見習え」と言われたほどだったそうです。
現代ではメールやLINEが主流ですが、想いを伝える手段としての「手紙」は、今も変わらず人の心を打つものかもしれません。
■其の三|約束
遊女の約束の交わし方は、時に 非常に重い覚悟 を伴うものでした。
● 起請誓紙(きしょうせいし)
現代でいう誓約書のようなもので、神仏に対し「心変わりをしない」と誓い、破ればどのような罰を受けても構わない、という内容を書き記したものです。
信仰心の強かった時代、これを渡されることは絶対的な信用の証でした。
● 髪切り・放爪
指切りほど重くはないものの、髪や爪といった 身体の一部を渡す愛の表現 です。
「いつでも心はあなたのそばにある」という意味が込められていました。
実際には偽物を渡すことも多かったとも言われていますが、客にとっては“もらった”という事実そのものが重要だったようです。
●ゆびきりげんまんの由来
「ゆびきりげんまん」は、遊女が愛の証として小指の第一関節から先を切って渡した ことに由来するといわれています。
一度切れば二度と戻らない小指。
それほどまでに強い誓いを示す行為でした。
■其の四|彫物(いれずみ)
彫物は、二の腕などに「〇〇(客の名)命」と彫る、非常に強烈な愛情表現です。
別れた際には灸をすえて焼き消したとも言われていますが、これは身体に深い傷を残す行為であり、妓楼にとっては商品価値を下げるものでもありました。
実際にどこまで許されていたのかは不明で、一種の遊女伝説 と考えられる部分もあります。
花魁のモテ技術が教えてくれるもの
かつての花魁や遊女たちは、限られた環境の中で、知性と感情、計算と情熱を使い分けながら生きていました。
現代とは価値観も表現も違いますが、そこには今も通じる「粋な愛のかたち」 があったのかもしれません。
たまには少しだけ、勇気を持って想いを伝えてみる。
そんな気持ちを、花魁たちの手練手管は教えてくれます。


